民俗学 − 研究内容
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当館は国指定重要有形民俗文化財「三浦半島の漁撈用具」を収蔵しており、漁師の信仰や多様な生業について多くの研究成果を残しています。具体的には、複数の漁を組み合わせ、農業や行商、工場勤めなどをしながら生計を維持していることが明らかになりました。これは、民俗学における生業研究を代表する成果です。
また横須賀は幕末の横須賀製鉄所を皮切りに、いち早く近代化を成し遂げた地域でもあります。それにともない、人口も急速に増え、商業地域も発展していきました。このことを踏まえ、力を入れて取り組んでいるのは、近現代の商工業地域や住宅地を民俗学的に分析することです。昭和初期から開業した商店主の方からの聞き取り調査では、横須賀だけでなく、市外から来たお客さんとの交流も知ることができます。いわゆる新興住宅地での調査では、横須賀に住んではいるけれども職場は市外にあるサラリーマン家庭の生活を知ることができます。横須賀市船越町の町工場で作られていた金銭登録機には、市外・県外の家内労働者が関わっていたことが明らかになりました。横須賀での暮らしや技術を知るためには、専業農家や漁師のように職住一致が基本の人々だけでなく、市外の人々も横須賀を構成する一員として注目する必要があります。
このような研究の成果を、「三浦半島の漁撈用具」公開日や博物館教室などを通して市民の方々に伝えています。(民俗学担当:瀬川 渉)